【終】霊感なんてあまり信じてなかった話
東京に戻ってから、
そういえば家具が変に動いていたり、アンプのセッティング変わっていたりというようなことは無くなった(気がする)。
元々、気がする程度だったのだが、意識をすればするほど自分の傍にいた何かが居なくなっていたような気はする。
連絡先を交換していたMさんとは、後日お礼の連絡を入れたら
「困ったことがあったらお互い様なので。」
と、「らしい」文面が返ってきた。
それからは、クリスマスムード全快な雰囲気に立ち眩みを感じたり、胃腸炎→インフルエンザという訳の分からないムーブをかましたりしていた。
体調が悪いときに気を紛らわそうと、
ライブ配信アプリを導入し、見事に【推し】を見つけた話はまたどこかで。
これにて、このお話はおしまいです。
霊感なんてあまり信じてなかった話13
付箋紙くらいに折りたたまれていたその紙を取り出して、中身を読んでみた。
―――――――――――――――――
蘭へ
ごめん。
上手く言えないけど、出ていくことにするよ。
多分君は優しいから私が居続けてもしばらくは我慢してくれると思うけど、それじゃ私はいつまでも依存するから。
この手紙も、見つけることはないと思うけどなんか自分がいたっていう形をなんでもいいから残したくもなったんだ。
楽しかったよ。
偽物ばっかだったけど、ごめん。
じゃぁ。
―――――――――――――――――
手紙はそこで終わっていた。
栞さんらしい短い手紙は、
月日が経っていたからか日焼け?をしていて。
紙の四隅には、水滴を吹いたような跡があった。
不動産屋業者「蘭君って書いてあるから……多分、〇〇さん(俺のこと)のことですよね?」
俺「そうですね…。」
なんとも言えない気持ちがこみ上げていたところだったが、ある意味で一人じゃなくて良かったと今になって思った。その場ではちょっと黙ってほしいなと思っていたのも事実だが、入居予定もないのに部屋に上がらせてもらえただけありがたいので何も言わなかったが。
それからは、その足で桑原さんに言われた寺院に向かい、
栞さんが残していった財布と携帯電話、そして手紙を全て渡して。
本当のさよならをした。
ここまでが大きな話です。
もう少しだけおまけ程度に続きますが、乱雑な文章で申し訳ないと思っています。
霊的な話とは無関係ですが、年末年始にかけて体調が崩れています。
元々の文才・計画性の無さに体調不良というどうしようもない言い訳でだらだらと書き綴っていましたが、次回あたりで終われそうです。
霊感なんてあまり信じてなかった話12
それからは少し日にちを空けて。
その間には、本業の方にも戻って仕事をして。
12月24日(日)のクリスマスの日なら……と不動産業者から打診があり、見に行かせてもらうことが決定した。
大学から2駅電車に乗ったところにある駅。
私の知っているお店も景色も、どれもが少しずつ変わっていた。
当時、家賃39000円という都内、急行が泊まる駅としては破格のボロアパート。
2階建てて、その安さからよく分からん言語の外国人が大半住んでいた木造の建物は今も残っていた。
不動産業者「で、▲▲号室のお部屋ですと、今は入居はされていないですね。」
俺「そうですか。すこし見させてもらってもいいですか?」
不動産業者「よければ中も見ます?」
昔と変わらない、個人のその業者の人は。
そう言って、扉を開けてくれた。
あぁ、、
懐かしいな。
6畳の部屋と狭いキッチンがある廊下。
この時代に不釣り合いすぎるバランス窯のお風呂。
設計ミスったとさえ感じられる、大きすぎるくらいの窓。
家具などはないが。
栞さんと住んでいたその部屋があった。
押し入れの襖を開けると、昔ながらの2段構造のままだった。
1段目に布団と収納ボックスを入れて、
2段目には突っ張り棒で服を干していたっけ。
そんなことを思って少しかがんでみると、2段目の裏の奥の部分に白い紙のようなものが挟まっているのを見つけた。
俺「ん?なんだこれ。」
不動産業者「どうかしました?」
俺「いえ、なんか…紙みたいのが挟まっているみたいなんで、ちょっと潜ってみていいですか。」
不動産業者「下段は狭いので、頭気を付けてくださいね。」
そうして、下段に潜ってその白い紙に手を伸ばすと、B5くらいの紙が小さく折りたたまれたものが出てきた。
霊感なんてあまり信じてなかった話11
守ってくれていた霊は、おそらく私の祖母に当たる人だと思う。
私の父の母に当たる人は、私が生まれるよりも前に家を出たという話を幼少期に聞いた。今聞いてもあり得ない話だが、父が子供の頃。祖父は何気ない喧嘩から祖母を追い出したそう。
元々、父は祖父への不信感が強く(祖父の代よりも上までは組にも入っていたとかなんとかで、親指がないわ、虐待はするわが当たり前の家庭だったと壮絶な話も昔聞いた)、そんな中で、自分の母親を一方的に家から追い出したことで、父と祖父の関係は最悪になっていた(らしい)。
また、勝手に母を追い出したにも関わらず、生活力のない祖父に2人の子供を育てる力はなく、住み込みの家政婦を「疑似的な母役」として雇っていた。
この住み込みの家政婦のことを、私は物心がつくまでは【実の祖母】だと勘違いしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
祖父がなくなったのは、約5前のことだった。死とともに、家政婦さんは姿を消し、闇の思い出しかない家と土地はすぐに売りに出したという事後報告を父に聞いた。
私を護ってくれていたのは、おそらく、家を追い出された祖母に当たる人なんだろうなと直感で思った。これを調べる術はおそらくないが、自分を守ってくれる年老いた人の霊というのはここしか思い当たる節がなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
桑原さんの話を聞いて、祖母が私を護ってくれているのだと嬉しい半分、もう死んでいるんだという事実で哀しさを感じてしまった。
Mさん「で、もう一人いましたよね…?」
桑原さん「その子は気にしなくていいよ。2人憑いてたから、遊んでると思ってついてきちゃった浮遊霊だよ。学校の先生だと多分、住み着いてる霊もいるんだと思うよ。しばらくは憑いてると思うけど、普通に生活してたら学校にまた住みなおすから大丈夫だよ。」
M「へ…へぇ……」
と、自分に憑いていた霊の全貌を聞かされる頃には、ごはんも食べ終わっていた。
俺「……一緒に住んでいたアパートに行ってみようかと思います。」
桑原さん「そうしなさい。後は自分でできるかい?」
俺「はい。Mさん、また東京帰るまででいいので車出してもらってもいいですか?」
M「それはいいですよ。」
そうして、私は桑原さんの家を出ることになった。
Mさんの車の中では、当時住んでいたアパートを管理している不動産屋に電話をして、一度外観だけでも見させてもらえないかと頼んだ。
ーーーーーーーーーーーーー
そろそろ終わります。15くらいで締めれたらいいなと思っています。
霊感なんてあまり信じてなかった話10
通された部屋には、たくあんと焼いた鮭とみそ汁と白米の茶碗が置かれていた。
桑原「さて、じゃ食べようか。いただきます。」
Mさん「いただきます。」
そこにはMさんもいた。
桑原さん「Mさんがこのみそ汁作ってくれたんだから。冷めないうちに食べなさい。お腹はすいてる?」
俺「はい、いただきます。」
それから、ごはんを食べながら何があったのかを桑原さんは話してくれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一番強い念だった生霊は、おそらく栞さんで間違いないということ。
栞さんを一度、私に降霊して(憑依とでも言うのか)、それから引きはがしを行ったということ。
引きはがしをしたから、しばらくは大丈夫なはずだということ。
桑原さん「ただ、私ができるのはここまで。引きはがしたけど、生霊のケースは初めてだし、何よりも同じ人に2回祓うことはしたことがないから、次に蘭君に何が起きても助けられることはないと思ってね。」
続けて
桑原さん「そもそも、私は人というものが嫌いで、極力関わりたくないからこんな所にいるんだ(笑)だから、ごめん。こっから先は、蘭君が頑張ることだよ。………ちなみにだけど、栞さんとの思い出の品とか頂き物とか、何でもいいんだけど持っていない?」
俺「彼女が置いて行った財布と携帯電話は、ずっと家の奥深くに持っています。」
桑原さん「家に帰ったら、それをもって、〇〇という寺院に行きなさい。都内にあるから、そこに行けばちゃんとしてくれるはずだから。そして、可能なら一緒に住んでいた家に行ってみるといい。何かあるはずだから。」
俺「何か・・・?」
桑原さん「それは分からないけど、大丈夫。今すぐに君に何か取って食われることはないはずだから。もう、ここでできることはもうないよ。Mさんもわざわざありがとうね。」
M「いえ、、なんとなくは分かりましたけど。他の霊は・・・」
桑原さん「年配の霊は、ずっと君を護っていたんだよ。最初からMさんが見えていたのは多分そっちの方だと思うよ。」
自分を護っていた年配の霊。
思い当たる人は一人しかいなかった。
霊感なんてあまり信じてなかった話9
それからは。
照明の電源をパッと落とすと、
"私"は、ばたんと床に寝そべるように倒れた。
桑原さん「…………………………本当は、居なくなりたいわけじゃなくって。ただ、素直になれなかっただけなんだよね。今も。」
ううう……。うぅ……。
呻き声が何処かから聞こえていたことは覚えていた。後で聞いた話では、それも私の声だったらしい。
桑原さん
「苦しかったよね。寂しかったよね。だからさ、今度部屋に戻ってきてよ。そんで、また蘭君とお話しよう。」
うぅ…………。
桑原さん
「だから少し、ごめんね。ちょっとだけ離れてもらうからね。……………………」
そこからは、お経を詠んで簡単に引き離して、その夜は終わった……らしい。
ーーーーーーーーーーーー
次の日の朝、
ぐしゃぐしゃに濡れた顔で目覚めた私に桑原さんが言った。
桑原さん
「おはよう。無理して喋らなくていいからね。朝食を用意してあるから、顔だけ洗って、隣の居間にきなさい。」
俺「あの…………。」
桑原さん「説明は後々。疲れたでしょう。食べながら、話そっか。」
霊感なんてあまり信じてなかった話8
「泣きながら、二人で話をしました。好意の気持ちは嘘ではないけれど、それは過去に戻れない妥協の上にこの恋愛をしている、と分かった時には2人とも泣いていました。」
・・・・・・・・・・・・
栞さん「そっか。私も人のこと言えないけどさ……本当、私達って最低だよね。ごめん。」
俺「よく分からなくてごめん。」
栞さん「……じゃぁ家は出ていった方が良いかな?」
俺「いきなりは無理だろうし、嫌いになったとかじゃないからいつでもいいよ。」
栞さん「分かった。……そろそろバイトだよ。平気?」
俺「うん。そろそろ行く。じゃあまたね。」
栞さん「行ってらっしゃい」
・・・・・・・・・・・・・
「これが栞さんとの最後の会話でした。バイトから帰った家には、栞さんの携帯も財布も全てが置かれて、栞さんだけが居なくなっていました。」
失踪したってこと?
「身分が分かるものは全て抜かれている状態の財布がありました。携帯はありましたが、ロックがかかっていて開けられませんでした。警察にもいきましたが、何よりも私との関係性が親族でもない、正式に同居をしていた訳では無いので、捜索願いも出して貰えませんでした。」
「バイト先の履歴書のコピーの実家等は全てデタラメでした。」
それから数ヶ月、数年と月日が経って……もうどうしようもなくなって。
「栞さんの事は忘れなきゃいけないってどこかで思って、今まで過ごしていました。」
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここから先は記憶が飛んでいます。
起きた時には気絶していたので、後で桑原さんに聞いた概要となります。