霊感なんてあまり信じてなかった話7
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「・・・・栞さんは付き合うよりも前に同棲…というかルームメイトになったんです。バイト先が同じだったので、初めのうちは一時避難場所くらいだったんですけど、いつからか本当に家との折り合いが最悪になった瞬間があって。そこからは完全に一緒に住んでました。」
うんうん。と桑原さんは相槌を打ちながら聞いていた。
「入り浸っていた先輩が気を利かせたのか家に来なくなっていって…しばらくルームシェアしてから告白をして、付き合ってもらえました。」
桑原さん「付き合ってもらえた?」
「はい。”君はいつか私を嫌うよ、絶対”って言われながら、付き合う事になりました。その時は家の事とかなのかなって思って、そんなのは関係ない!って説得して、話し合って、先輩後輩の関係から恋人になったんです。」
うんうん。
そうだ、そうだった。嫌いになったんじゃない。
忘れたわけじゃない。
「でも、私も栞さんも付き合って、話し合う中で、お互いが高校生の頃の失恋を引きずっていることが分かりました。戻りたい、とかでは無いけど、凄惨な終わり方をお互いがしていたから、後悔が強かったという表現が正しいと思います。」
そうだ。
確か、それがきっかけで。
「私は、高校生から大学入学にかけて1人付き合っていた人がいました。でも、遠距離恋愛が理由で振られて、振られた後すぐに浮気されていたことを知りました。栞さんは栞さんで、好きだったけど素直になれなくて最終的に無理矢理嫌われるようなことをしてお互いが無理だねってなったと聞きました。」
「そこからは、歪んだ恋愛が始まりました。どちらから言い出したか忘れてしまいましたが、過去の人としたデートをなぞるように真似をしたり、逆に過去の人とした事ないデートスポットをあえて選ぶようにしたりしました。」
苦しくなかった?
苦しくなかったんです。
むしろ。
「私は、栞さんが好きなのか、高校生の時に付き合っていた人が好きなのかが分からなくなってしまったんです。でも、過去に戻ることはできないから、その気持ちは出しちゃいけないって押し込めていました。そして、それは栞さんも同じと言う事が分かりました。」
泣く資格はない。
それでも、嗚咽と涙が止まらなくなっていた私がいました。
「ある時、話があると。お互いに同時に切り出していました。私が深夜バイトが始まる1時間前に話そうと言うことになりました。」
それで、そうだ。
栞さんは居なくなった。
忘れたことは無かったけど、
しっかり振り返るのは怖かったから忘れたフリをしていたんだ。
忘れたかったんだ。